『7人のシェイクスピア』
7人のシェイクスピア 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: ハロルド作石
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/05/28
- メディア: コミック
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これまで若者の青春を扱ってきただけに、歴史ものというチョイスはとても意外だ。
物語はこう始まる。
『わが骨を動かす者に呪いあれ』
最後にこの言葉を残したのは四百年前の詩人である。
彼は一体何者だったのか。
「ハムレット」「オセロ」「リア王」をはじめとする数多くの傑作を書いたとされるシェイクスピア。このなんとも謎の多い男が一体どんな人物だったのか。それがこのマンガのストーリーのようだ。
実は1巻ではシェイクスピアが冒頭にしか登場しない。主に語られるのは「リー」と呼ばれる中国人の少女。不思議な力をもつこの少女の悲劇が、1巻では主に展開されている。そして1話目で「シェイクスピア」と名乗る人物が、2話目にて13年時を遡った時には自分のことを「ランス・カーター」と名乗っているという謎。「7人のシェイクスピア」とタイトルにある通り、シェイクスピアという多面的な人物を、7人の人格として語るのだろうか。
それにしてもこのヒト、表情を描くのがすごくうまい。セリフを読まずにパラパラとページを捲っていくだけで、登場人物たちの感情の流れを感じ取ることができてしまう。これほど豊かで繊細に表情を描けるマンガ家はなかなかいない。不思議な力をもつばかりに幼い頃父親に喉を潰され、周囲の者には疎まれて育った少女リーが、災いを鎮めるために生贄として捧げられることを、自分の運命として受け入れていくまでの過程が、彼女はほとんどの場合無表情でありながらも、読む人の感情を揺さぶる。
実力派作家が歴史上の謎にどう挑んでいくのか。これからが楽しみだ。